いぐあな

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300字小説

嬉し雨

 むかし、この地方には不思議な竜が住んでました。竜の今日の心模様で晴れたり、雨が降ったりするので、この地を治める王様は道化師を彼に与えました。道化師は竜を滑稽な芸で笑わせたり、悲しい話で泣かせたりして、上手く天気を操っておりました。しかし、そんな道化師の活躍を快く思わない者達が彼を奸計にはめ、道化師は竜と引き離され処刑されてしまいました。

「……それを知った竜は嘆き悲しみ、大雨で国を湖の底に沈めた後、小さな島になりました」
 丘から案内人が大きな湖の真ん中の小ぶりな島を指す。
「今でも道化師に似た人が湖を訪れると竜が彼が帰ってきたと嬉し泣きをするそうです」
 丘の上に立つ。空が曇り、暖かな雨が降ってきた。

お題「今日の心模様」

4/23/2024, 11:54:18 AM