小音葉

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白い氷が擦れて削れて、ぬるい水溜りになるまで
泡沫の窓から記憶を鑑賞するならば
他人事のように自分を天秤に乗せて裁けるだろうか
後悔は滝のように噴き出して
透明で美しかった少女はとうに枯れて跡形も無く
混ざり込んだ不純物こそ私だった

今がどれほど濁っていても
あの地獄へ戻りたいとは思わない
惨めで汚らしい濁流を泳ぐ方が
ずっとずっと自由だから
漕ぐのを止めれば沈んでしまう
息継ぎをしないと溺れてしまう
だけどそれが生きるということ

世界が気にも留めない一欠片の石ころ
荒道に身を投げて砕ける覚悟もない
丸く滑らかに輝く気力もない
それでも私は生きている
死にたくないから生きている

無数の影が通り過ぎる道端で
素知らぬ振りして世界を眺める
地面を這いながら見える視界は低く狭く
かつての少女は姫にも魔女にもなれないけれど
明日もきっと生きていくんだ

(クリスタル)

7/2/2025, 10:30:15 AM