【スリル】
綺麗な顔についた傷口の一つ一つに消毒液をかけ、絆創膏やガーゼで覆ってやる。不機嫌そうな表情を浮かべながらも俺の手を拒まないのは、俺がブチギレて余計に面倒になることを知っているからだ。
「おまえさぁ、いい加減に火遊びはやめたら?」
「うるさい。僕の趣味に口出しするな」
悪い大人どもと付き合って、悪い遊びにばかり連れ回されて、それを趣味とは笑わせる。結局コイツはそういう刺激と痛みがないと、生を実感できない大馬鹿者なだけだ。これ以上言っても無駄だとわかっているから、文句を飲み込んで代わりに一つため息を吐き出した。
スリルがなければ生きられないおまえと、安定と平穏のみを好む俺とは、決定的に噛み合わない。それでも二卵性で顔も性格も1ミリも似ていないこの双子の弟をあっさりと見捨てられるほど、情のない人間ではないのだ。
「ほら、手当て終わったぞ」
せめてもの腹いせに、真新しい傷をガーゼの上から軽く叩けば、小さな舌打ちと膝蹴りが飛んできた。
11/12/2023, 9:52:54 PM