ほろ

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「ようやく辿り着いた」

勇者が目の前の城を見上げるのに倣い、魔法使いも隣で顔を上げる。冒険に出た時は多かった口数も、今はかなり少なくなった。それは、世界の変わりようを目の当たりにしたからであり、仲間たちとの別れがあったからである。
「長かったですね」
「ああ。結局、最後はお前だけが残ったな」
「まあ、仲間たちのように復興支援に力を注ぐよりは、貴方の力になる方が良いかと思ったので」
「そうだな……だいぶ助けられたよ。ありがとう」
「感謝は戦いが終わってからにしませんか?」
確かに、と勇者は剣を抜く。
「行こう」
幾度となく見た勇者の背中に、魔法使いも自然と笑みが零れる。勇者に応え、魔法使いは杖を持ち直した。本当に、長い旅路だった。

「まさか世界一周旅行になるとは、思ってもみませんでしたよ」

呟いた声に、前を行く勇者が笑った。
青い空。見慣れた街の中に建つ、穢れを知らない純白の城。旅立つ時にも訪れた、始まりの場所であり終わりの場所。
世界を混乱させていた元凶が、始まりの地にいるだなんて勇者も誰も知らなかった。
城から何百人もの兵士たちが出てくる。
「さあ、最後のひと暴れだ!」
剣がぶつかり合う音がする。
魔法使いも攻撃魔法を放ち、勇者の後を追った。

長い旅路の果てに待つのが見知った人間との戦闘だなんて、これが物語なら酷いエンディングだな、と微笑みながら。

1/31/2024, 11:49:23 AM