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『愛言葉』


私と彼の、会話のバランスは8:2といったところだろう。

彼は出会ったときから関西弁。
私は生まれたときから標準語。

「関西人なのにあんまり喋らないね?」
「なんやねんその偏見。そっちがずぅっっと喋ってるからやん。」

出会って間もない頃にした、そんな会話を覚えている。
多くを話すタイプではないけれど、彼の話を聞くのは好きだった。


一緒にいる期間が長くなって、私の言葉が変わってきた。

「なんか、関西弁うつってるかもしれへん!」

私が言うと。

「それ関西弁ちゃう。単純にイントネーションおかしなってるで。」
「嘘やん!関西弁やし!」

反論したものの、彼に言われて色々と口に出してみると、たしかに彼の音とは違う。
ものすごく中途半端な、所謂『エセ関西弁』になっているようで。

「エセ嫌やぁ...なんとかして。」
「練習するもんちゃうし。しゃーないやろ。」

あんたのせいやで、と嘆くフリをしながら。

私と彼の間だけに生まれた変な言葉たちが、少し愛おしい。

10/26/2024, 11:03:16 AM