かのこ

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『終わらせないで』2023.11.28


 終わらせないで、と誰かが叫んでいる。
 それが誰かは分からないが、常に自分の傍にいたような気がする。
 仕方がなかったと言い訳のように唱えれば、その誰かはまた、終わらせないでと叫んだ。
 なので、また仕方がなかったと自分に言い聞かせる。
 もらい事故のようなものだったのだ。それは。
 たった一つの小さな力だったが、傷口は深くジクジク傷んだ。
 終わらせないでと叫んだ誰かは、悲しそうに恨めしそうに睨んでくる。
 いまさら、どうすることもできない。
 子曰、君子貞而不諒。という言葉があるが、短絡的でない君子になれるほどの余裕は自分にはない。
 頑なにその声を聞こえないふりをしていると、誰かはついに諦めたのか声をあげなくなった。
 そうなると、急に言いようのない消失感に襲われる。
 ごめんと謝ったところで、その誰かは応えてくれないし、気配すら感じることもできない。
 後悔先に立たず。
 細かなことでなく、大義を信じればよかったと後悔したときには、もう遅かった。

11/28/2023, 1:32:44 PM