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闇が去り、久方ぶりに太陽が顔を出せば、大地を覆う雪はほろほろと溶け始める。
雪の下でひっそりと息づいていた新芽は、晴れ晴れとその身を伸ばし、花を咲かせる。
葉や草の緑の合間に、赤や紫、黄色といった色とりどりの花弁がのぞく。
温かくなってくると、極北は案外鮮やかだ。冬の間は闇と氷に閉ざされて色を失うからだろう。小振りでも、花々の彩りはまばゆいほどだ。
春が過ぎ夏になれば、花々は盛りを迎え、寿ぐように獣たちがあちらこちらで鳴き交わす。
そして、空を仰げば、虹色の羽根がひらめく。翡翠の鱗に七色の羽根を持つ竜が、陽の光を追いかけて、南からやって来るのだ。

1/8/2026, 1:31:03 PM