たやは

Open App

おもてなし

ここは、おばあちゃんから受け継いだ小さな喫茶店。昼間は、サラリーマンや女性のグループがランチに来てくださるし、午後はケーキなど甘味もあり、近所の奥さま達が足を運んでくださいます。
夜は23時から店を開けるようにしています。毎日営業するのは無理なので、申し訳ないのですが、週に2日で不定休、つまり当日にならないと営業しているか分からないスタイルをとっています。でも誰からも苦情はありません。
だた、これからは、ちょっと変わったお客さんが来る時間となります。

「やあ、お嬢さん。今日は店を開けるのかい。嬉しいねぇ。」
こちらは、高下駄を鳴らしやってくる天狗さん。

「お!飯が食える日か。あんたの飯ウメェーよな。あとて店に行くからな。」
こちらは、近所の川からいらっしゃる河童さん。

「今日のご飯はなあに?ケーキある?今日は何ケーキ?」
こちらは、可愛らしいおかっぱ頭の座敷童子さん。

小さな喫茶店なので、5〜6人の入れば満席となってしまいます。このちょっと変わったお客さん達は、おばあちゃんの頃からの常連さんです。
他にも、唐傘さん、猫又さん、一反木綿さん、地蔵さん。などなど。皆さんよくいらっしゃる方達ばかりでありがたいことです。

今日は珍しくぬらりひょんさんがいらっしゃいました。いつも1番奥のカウンターに座り、コーヒーを飲んでいらっしゃいます。お食事はせずに「いつものコーヒー」です。静かに過ごす方です。

「またコーヒーが上手くなったな。あんたのバアさんのコーヒーに近くなってきた」

「嬉しいです。ぬらりひょんさん。おばあちゃんには及びませんが、心からおもてなしさせてもらいます。」

「うむ。」

「あいつカッコつけちゃってさあ。前の店長さんが初恋なんだろ?笑える。何百年も生きて初恋だってよ。」

あのあの、小鬼さん聞こえますよ。ぬらりひょんさんを怒らしてはダメと目玉さんに言われているので、お静かにお願いしたいです。

そうなんです。ぬらりひょんは、おばあちゃんが好きだったようで、おばあちゃんに会いにお店に毎日通い、「いつものコーヒー」を飲んでいたようです。
おばあちゃんが亡くなったばかりの頃は、寂しそうにコーヒーを飲んでいらっしゃいましたが、私がカウンター越しにおばあちゃんの話しをすると少し嬉しそうにしてくれます。心の傷が癒えてくれれば幸いです。おばあちゃんも喜んでくれるかな。

おばあちゃんとちょっと変わったお客さん達がなぜ知り合いかは、詳しくはわかりません。でも、おばあちゃんが子供の時に疎開していた田舎でぬらりひょんさんを助けたことがあったようです。そこから始まったようです。
ぬらりひょんさんは、おばあちゃんとの馴れ初めを絶対に話してくれないので、今度、目玉さんにでも聞いてみようかなと思っています。
怒らせてはいけないのでにナイショですよ。

10/28/2025, 6:21:52 PM