小絲さなこ

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「彼女と私の道」


子供の頃からの夢を叶えるため、明日、彼女はこの街から出ていく。

「仕方ないよね。うちの県に私の志望する学部が無いんだから」

彼女はすべてを吹っ切ったような、さっぱりとした口調でそう言ったあと、一瞬寂しそうな表情をした。

すべての子供に平等な教育を──などと言うが、希望する職に就くための教育機関が地元に無い場合、それは本当に平等といえるのだろうか。

「でも、やっぱり、どうしても諦めたくなくて」

彼女は悩んだ末、昔から描いていた自分の夢を追うことに決めた。
親に金銭的負担をかけるかもしれないと悩んでいたが、その職業に就くことが出来たら、日本国内どこに行っても仕事に困ることはない。当然、地元に帰ってきても引く手あまた。色々と条件は出されたものの、ご両親は最終的に賛成してくれたのだという。


「絶対、絶対帰ってくるから」

約束──と、互いの小指を絡める。

「私のこと、忘れないでね」



まだ自分のやりたいことが何なのかわからないままの私は、このまま地元の大学でなんとなく大学生活をエンジョイして、そのまま地元の企業か役所に勤めて、そのまま地元の人と結婚するのだろう。

幼馴染の彼女と私の道は、ここで分かれる。

それでも今生の別れではないはずだ。

どうしてこんなに胸が苦しいのだろう。

次に会う時には、彼女が別人になってしまうような気がするからだろうか。


「絶対、ずっと友達だから」


彼女を抱きしめて、それだけ伝える。
身勝手な本音は、私の心の奥深くに沈めて。



────行かないで

10/25/2024, 2:50:56 AM