川柳えむ

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 見上げるとずっと上の方がキラキラと輝いている。
 その光を見て、これが美しいということなのだと知った。
 ――あぁ、あの光の中へ行けば、私も美しくなれるかしら?
 誘われるように、あの光り輝く場所へ。

 途端に引っ張り上げられた。
「……っ、大漁だ!」
 光の中へ連れ込まれた。きっとそこは美しい世界なんだと信じていた。
 ――眩しい。……苦しい。息が、できない。
 世界は残酷だった。
 私の居場所はあそこしかなかったのだと知った。今更、もう遅いけど。


『海の底』

1/21/2024, 5:16:07 AM