彗星

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ヴーッ───
スマホが光る。

『今から来て』
たったそれだけのメッセージが送信されている。
「今から来てって…ほんと、、」
呆れたようにスマホを手に取り、私は考える。
今は深夜2時。今日は朝から仕事で、帰ってきてからも色々な作業をして、やっと今から眠りにつくところだった。
本当だったら、行くべきでは無いと思う。
疲れてるとか面倒くさいとかそれ以前に
彼の"都合のいい女"になりたくはなかった。
けれど、もう既に私は何度も彼とそういう事をしてきたし彼からの呼び出しに結局応えてしまっていた。
そして今も。

『ちょっとだけね』

そう彼に送り、私は軽いメイクと身支度を終え家を出た。香水とリップは一応つけておいた。


真夜中、暗い道を一人で歩く。
「迎えくらい来てよね」
彼が車を持っていないことを分かっていながらもそう思ってしまう。

ガチャ───
「おじゃまします」
「おーおつかれぇー、」
「ちょっと、なんか臭いんだけど」
「えぇ〜?そんなことないよ笑」
明らかに酔っ払っていた。
私が前に片付けたはずの部屋がもう既にお酒の缶やタバコの灰皿が散乱していた。
「もう、せっかく綺麗にしたのに」
「いいじゃん、きにしなくて」
「ダメだよ。ほら綺麗にするよ」
「待って。」
「?」
「それより先にさ、ほら」
彼が少し含みを持たせた言い方をしてきた。何を思っているのかは分かる。私だって、それを理解した上でこの家まで足を運びに来た。
「はあ…ほんとにちょっとだから」
「ん、はやく。自分からしてみて」
彼のそういう不意な発言にはいつもドキッとさせられる。
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私たちは事を終えてから、すぐに解散した。
正確に言えば事を終えた後に彼が寝てしまったから、解散せざるを得なかった。
ちょっと、と自分で言っていたものの、私の方がもっと一緒に居たがっていたし彼の方がもう満足といった態度だった。
私は、彼の寝顔を見ると毎回思う。
"都合のいい女"に自分がなっているのは彼のためになるならそこまで嫌なことじゃないんじゃないかって。
二人繋がってるときも、彼は私の香水の変化やリップの色の変化にも気づいてくれる。
私はいつも嘘をついて変えてないとか、つけてないとか言うけれど彼の全て見透かしてるようなその目が好きだった。
また明日も明後日も彼から真夜中に呼び出されることを少し期待してしまう。この世界に二人きりかと錯覚するような、そんな時が好きでもあり嫌いでもある。
私にとって一番幸せで辛い時間はこのミッドナイトだ。


ミッドナイト

1/26/2026, 3:37:06 PM