モンブラコン*

Open App

 明日、もし晴れたら、姉さんがキレます。

 初めまして、お久しぶりです。
 山奥の秘境中の秘境村で暮らしている、
人型モンスター姉弟の謙虚な末っ子です。
 山奥とはいえ、今年の暑さの異常さは、村にもしっかり届いております。
 八割御高齢の村人の中には、エアコンぜってぇ使わねぇから組がいらっしゃいまして、そのノンエアコン組が、テイちゃん(兄)の説得により、連日ウチに泊まり込んでいるのです。
 我が家はエアコン使う組なのですが、ノンエアコン組の為にエアコンを切り、姉さんの特殊能力[冷寒操作]により、家中を涼しくしています。
 姉さんは、何ともモンスターらしいこの力を発揮し続ける事に不満なのではなく、いつもベッタリのテイちゃん(弟)を、ノンエアコン組のノンストップお喋り祭りに取られてしまった為、イラついておるのです。
 姉さんはモンスターでブラコンなのです。
「しょろしょろ我慢の限界じゃびゃ……」
 オレと対戦型のゲームをしていた姉さんが、ポツリと呟き、冷蔵庫から紙パックのかき氷シロップ(大容量)を取り出すと、腰に手を当て、グビグビと飲み干した。※絶対に真似しないで下さい。
 外に出た姉さんは屋根に飛び乗り、
「ふり~はずめぇ~た~あしぇ~はっあすもとぉ~ちゃれてぇ……♪︎」
 歌い出した!…いや待て姉さん、その曲はダメだよ、替え歌にしたってアカンて、ただでさえ、某Dプリンセ○とドン被り能力持ってんだから。
 歌う姉さんが手を空にかざすと、6メートル位の白い氷柱が放射状に降り注ぎ、村を囲む様に山に刺さっていった。多分とけにくい特殊なやつ。
 氷柱から村全体に、冷気が届けられる。
 す…涼しい。
 ちらほらと村人が外の様子を見に、家から出てきて、そのまま散歩やら、農作業を始めた。
 ノンエアコン組もウチから出て来ると、
「らりごぉ~らりごぉ~♪︎」
 姉さんはテイちゃんのたくましい腕を、小さな腕と、大きな胸で、がっちり掴み、家に入り、玄関の扉(横にスライドするタイプ)を閉めながら、
「しゅこぉ~しもっあちゅくにゃいわ♪︎」
 ……確かに。

8/2/2023, 6:34:10 AM