sweet memories
「今日はありがとう」
あなたは、私を振り返って微笑んだ。彼女の頬がどことなく赤く染まっているように見えたが、僕の気のせいだったのかもしれない。
夕陽で空がオレンジ色に染まり、僕たちもオレンジ色に照らす。彼女の顔が夕陽に照らされて夕焼け色に染まる。
そんな彼女の表情に一瞬見惚れた。
先程浮かべた笑顔が、今はなんだか少しだけ物言いたげに僕の方を見る。
彼女の今まで見せたことのなかった表情に目を奪われる。
「あのね、私……」
彼女の頬が染まるのは、夕焼けのせいなのか、それとも、僕が期待してしまったからなのか。
伝えるのなら今だ。
僕は思わず彼女の名前を呼んだ。
彼女はハッとして僕の目を見つめる。
「好きなんだ」
彼女の目に涙が滲み、僕の胸に飛び込んできた。
「そんなこともあったね」
ソファに坐った彼女は、僕と一緒に写った写真を何枚も眺めながら、僕に向かって微笑んだ。
家で2人でじっと部屋で過ごした時の写真。
海や山に行って撮ってきたたくさんの写真。
そして、あの日告白する前に撮った夕焼け色。
あの日と同じ夕焼け色が窓から差し込み、あの時と同じように彼女の頬を照らす。
その時のことを思い出して、僕の顔も思わず胸が高鳴る。
今では僕の妻となった彼女は、隣に座る僕に身を寄せ、銀色にきらりと光る指を絡めた。
5/3/2025, 9:47:55 AM