※一つ前のお題です
伝えたい。
俺はアイツが嫌いだってことを。
小学校中学校高校と散々俺をいじってきて、かと思えば俺のことを好きだとか言い出して。
俺は嫌いだってのに、何故かそのときはOKしてしまった。今思えば若いが故のノリで付き合ったんだと思う。
だけど、俺はあの時も今もアイツが嫌いだ。
「熱出たの?」
「うん」
「はーーちゃんと体調管理しないからでしょ」
「うるせーよ、関係ないだろ」
「心配してあげてるのになにその言い方ー!!」
「別に心配なんていらねーよ」
「うざ。てかもう帰るの?」
「保健室の先生が帰れって」
「そう、じゃあまあまた来週」
「おう」
ピーンポン───
「はーい…って」
「やっほー」
「お前なんでここにいるんだよ」
「お見舞い来てあげたんでしょ!ほらほら」
「なんだよこれ」
「ゼリーと今日の授業のノート!一応全部の授業分書いといたから。ゼリーで元気だしなよ〜」
「え、やってくれたの」
「まあね笑どう?うれしい?」
「…まあ」
「笑笑ツンデレすぎー!じゃ、お大事にね」
「ああ、うん」
アイツは俺が熱を出したら必ずお見舞いに来るし勝手にノートをとってきたり賞味期限ギリギリのゼリーやプリンを渡してきたりする。
まあ、ノートは正直ありがたかった。
『好きです、付き合ってください』
「あーごめん私彼氏いるんだ」
「わ!びっくりした、なに、居たの?」
「別に。通りかかっただけ」
「本当は嫉妬してるくせに笑」
「……うるさ」
「…えっ?」
「はあ、早く帰るぞ」
「もー!素直に言えば〜??笑」
アイツはよくモテたし俺もよくアイツと付き合ってるのが羨ましいとか言われてた。
どこが?とずっと思ってたし言ってた。
お人好しだし、可愛げないし、すぐ怒るし、煽ってくるし、小さい頃のミスを大人になってもイジってくるし。
だけど真面目で、意外と繊細で、顔に出やすくて、泣き虫なくせに努力家で、無理しやすくて。
そんなところが、好きだった。
アイツの火葬が終わってからずいぶん日が経ったとき、アイツの父親が家に押しかけてきた。
アイツの遺書が見つかった、と。
そこには俺のことを書いているものもあって、アイツとは昔からの幼馴染である俺にはすぐに渡さないとと思ったらしい。
紙には、俺が知らないアイツの一面や俺が知りすぎているアイツの姿があった。
昔から病を患っていることは知っていた。
だから、他人の体調不良には人一倍敏感だったのも知っている。
俺がアイツにお見舞いにくるなと言っていたのは、単に照れ隠しだけが理由じゃない。
ただでさえ自分の病の治療で忙しいのに、他人の体調なんか気にするなと、そう思っていたからだ。
俺が知らないところでアイツはこんなにも悩んで、こんなにも絶望していたんだ。
それが、アイツの遺書でわかった。遺書の中でも時に無理して俺に笑いかけてくる。
アイツは、遺書を用意するくらい病が悪化していることを自分で理解していたのに幼馴染である、彼氏である俺にまで気を遣ってくれている。
本当に馬鹿なヤツだ。心底そう思った。
アイツが他の男から告白されているのを見て、俺は嫉妬してた。子供っぽすぎるそんな感情、アイツには絶対表向きにしたくなかった。
なのに、気づいてたんだな。
いや、俺が分かりやすすぎただけかもしれない。
アイツの遺書には、俺の名前が何度も出てきた。
『海が嫉妬していることも、私にはお見通しです。それに、海が私のお見舞いを本当は嫌に思っていないことも。私を心配してくれてたんだよね。』
その通りだった。
『わたしは正直、この昔からの病のせいでずっと苦しかったししんどかった。だけど海がいるおかげでなんだか少しだけ長生きできるような、しているような、そんな浮ついた気持ちでいられた。』
知っていた。アイツがよく俺が居ないところで咳き込んでいるのも、薬を飲んでいるのも。
アイツが俺といることで楽な気持ちになっているのは、気づけなかったけど。
『でも、私はもう生きられないみたいなの。海と一緒にまだまだ色んなとこ行きたかったな笑こんなこと言ったらまた気持ち悪いとか海に言われちゃうのかな〜笑
私は、海と少しでも長い間一緒にいれてよかった』
俺も、と思わず声が出た。返事は無い。
『あいしてるよ、大好きだよ。海、長生きしてね』
長生きするのはお前の方だろ。
俺はアイツが病で苦しんでいるのを知ってるはずなのに、しょーもない照れ隠しでアイツの"好き"にも返せてなかった。俺は、アイツが嫌いだったんだ。
無理ばかりする、馬鹿なアイツが。
でも馬鹿なのは俺の方だった。
アイツに好きだとか無理するなとか心配してるとかそんな言葉をかけてやれなかった。
アイツがいない世界はまだ朝なのに静かすぎて夜みたいだった。
あの時に、伝えられなかった。もう遅いかもしれないけど、でも、
伝えたい。
俺はアイツ、涼華が好きだってことを。
"伝えたい"
2/13/2026, 4:46:36 PM