揺れる木陰
青い空がぐんと濃度を増す。
もうもうと湧き上がる入道雲の下、
揺れる木陰で君の声を聞いた。
全力で叫ぶ君を見つめる僕は汗だくで、大声と暑さにうんざりしたけれど。
あの時、僕は確かに夏の訪れの真ん中にいたんだ。
今年も夏が来たらしい。
随分と急ぎ過ぎた夏の青空はどこか心許ない。
僕はやっぱり汗だくになりながら、
揺れる木陰で君の声を探した。
だけども君がいない。
どこにもいない。
懸命に声を張り上げる君の姿が見えないんだ。
僕が今立つ場所は果たして本当に夏なんだろうか?
きっと君がいないと夏は訪れないんだ。
なあ、セミ。
君の声が足りない。
7/17/2025, 12:35:14 PM