「ごめんよ、許しもなく君を連れ出したりして。でも、どうしても君とここに来たかったんだ」
愛する人は僕の言葉に反応せず、助手席で目を閉じたまま微動だにしない。
フロントガラスの向こうに広がるのは、薄いブルーの花の群れ。
生憎、草花には疎いので名前は知らない。そんな名も知れぬ花達が織り成す花畑が広がっている。
今頃病院は大騒ぎになっているだろう。
何せ臨終を告げられた患者の遺体が消えてしまったのだから。
「さて、名残惜しいけど帰らないとね……」
君は火葬されて骨と灰になってしまう。
君の美しい身体を燃やしてしまうくらいなら、この名も知れぬ花達を棺にして花葬にしてしまいたい
──そんな身勝手な願いを抱いてしまったことを、どうか許してほしい。
テーマ【花畑】
9/17/2022, 11:19:11 AM