街灯に明かりが灯る頃
公園のベンチに1人
サラリーマンが草臥れたスーツの上着をベンチの背に
掛けるとベンチに腰掛け
どこからか買ってきたホットの缶コーヒーを持ち
見るとも無しに公園の草むらにチラッと視線を向け
おーい
と呼びかけた
と
草むらから黒い猫が て て て と
男の足元に擦り寄ってきた
にゃお
黒い猫が鳴くと
男はベンチに掛けた上着のポケットから
ちくわを取り出し
今日は これな と
猫にちくわを向ける
昼飯の残りだよ
美味いぞ
そう呟くと
ひと齧りサラリーマンがちくわを頬張り
もぐもぐしながら
猫にちくわを再び向けると
猫はちくわを齧って
あっという間にパクパクと食べた
にゃお
それから
黒い猫はまた鳴いた
もうねえぞ
サラリーマンは言うと
冷めた缶コーヒーを飲み干した
次は何がいい
刺身は無理だな
サラリーマンは呟きながら
上着を羽織る
黒い猫はそれを見届けると
スッと闇に溶けるように
草むらに消えた
サラリーマンは今度はタバコに火をつけると
ぷかぷか吸いながら
明日はまた明日考えよう
と鼻を啜り
ベンチから立ち去った
そこには
静かに佇む街灯と
ベンチが残り
サラリーマンは
街の明かりに消えた
7/8/2024, 11:14:15 AM