Frieden

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「恋物語」

この曜日の夜9時には恋愛ドラマが放送されている。

少年少女が、あるいは大人が片思いだったり、両思いだったり、はたまた三角関係だったり。

結ばれることもあればその逆もある。
その後のことは誰にもわからない。
幸せに終わるのか、それとも不幸の始まりなのかも。

いずれにせよ、自分の経験上そういうのには興味も縁もない。
縁結びの神を祀った神社まであるというのに。

「えー!!!どうしてだい?!!幸せの形は人それぞれだからなんとも言えないが!!!経験として一度くらいしておけばいいと思うよ!!!」

確かに言う通りだが、興味を持てない以上しようと思ってもできない。あんたが代わりにやればいいんじゃないか?

「そうかもしれないが!!!なーんか違う気がするんだよね!!!でも、どうしてこんな普遍的なことに興味を持てないんだい???……無理して答えなくてもいいが。」

強いて言うなら、周辺で恋をした人が往々にして幸せそうじゃないから、かな。
それと、誰かに対して深入りはしたくないんだ。

「へー!!!なるほどね!!!」
「キミの恋物語を聞いてみたかったが無理そうだね!!!」

それじゃ、逆にこっちが聞くが、あんたは恋とかしたことあるのか?

「ないよ!!!だが!!!ボクは森羅万象を遍く愛しているうえ!!!全てに愛されている!!!だから!!!恋愛の必要などないのだよ!!!羨ましいかい?!!」

さすが自称マッドサイエンティスト。ものすごい自信だな……。

「自信じゃなくて事実だよ!!!ほら、キミもそうだろう??!ボクが愛おしい……そう思わないかい?」
はいはい。

「でも、恋っていうのは傷つくこともあるが、タダでできてしまう。一方で愛っていうのは関わるニンゲン全員が何かしらを犠牲にしているんだ。」

「無償の愛という言葉はあるが、見えないところで、知らないうちに、自分を、誰かを、なにかをすり減らしている。」
「まあボクはそんなことないけどね!!!」

「ボクが思うに、恋をするっていうのは誰かを、何かを愛する練習みたいなものなんじゃないかな!!!」
愛する練習、か。

「恋愛が難しいならさ!!!ボクを友達として、仲間として!!!大事に思ってくれたまえよ!!!」

そうか。そうだよな。
恋とか愛とか、そういうのは自分にとって縁遠いものだと思っていたが、案外身近なところにあるものなんだよな。

「そうそう!!!そうだよ!!!」
「それじゃあさ!!!今からちょっとゲームでもしよう!!!」
「これも恋愛の練習だよ!!!」

……ちょっと違う気もするが、まあいいか。

いつか、もっと誰かを愛せるようになれたらいいな。

5/19/2024, 3:25:48 PM