◤隣の花は赤い◢
隣の花は赤い。それに対してこちらの庭は荒地のようなものである。随分と前から空き家となったこの家は大量の雑草が生え、ボウフラが湧き、人の寄り付かぬ場所となってしまった。
隣の芝生は青い。こちらは茶色の地面が露出して、目も向けられないような汚さである。朽ちた家の木の板が剥がれ落ち、地面にバンとぶつかる。少しだけ、ほんの少しだけ痛いと思った。
昔はご近所付き合いが盛んだった。何時からか離れ離れになり今では見向きもされない。この家の主は死去して、それからそのボンクラ息子が所有者となった。まあ、予想通り荒地になった訳である。思い出の家は空き家として問題とされるようになった訳である。
ショベルカーが家を崩していく。市がようやく対策に乗り出したらしい。今日でこの家ともお別れだ。最後に一輪の花を咲かせた。真っ白な真綿のようなヤツデの花を。
離れ花れ
テーマ:はなればなれ
11/16/2023, 1:19:08 PM