NoName

Open App

君の目を見つめると


なるはやで持ってきて。
無愛想な声で指示して上司は会議室へ消えた。
はあ?自分が伝えておくのを忘れておいて何がなるはやだ?ていうかごめんねなるべく早く持ってきてくれるかな、とか言えないのか?

むかつきを抑えきれないままどすどす足音をたてて資料を取りに向かう。こちらを心配そうに伺う視線を感じたがあえて無視した。こちとらなるはやで行かないといけないもんでね。

無事資料を届け席に戻った。疲れた。今週はこんなことが多い。歯車が噛み合わなくていらいらする。6秒待っても怒りはどこへも消えていかない。

「大丈夫?」
彼女が声をかけてくる。
ありがとう、もう大丈夫。答えると同時にチャイムが鳴った。昼休みだ。
スマホを取り出して画面を眺める。そしてそっと彼女の横顔を盗み見る。こんなことってあるんだなあ。

画面にうつる茶色のふわふわとそっくりな瞳。
君の目を見つめると、午後からもがんばろうと思えるんだ。

4/6/2024, 1:16:46 PM