ただひとりの君へ
気づけば、すっかり街は朽ち果てていた。
政府によって人間は兵器となった。それはわたしも例外ではなかった。
黒服の何者かに連れていかれ、そのまま意識を失った。目が覚めてからは両親がどこか一線を引いて接するようになった——それが何故なのか、知ってしまってからは覚えていない。
わたしの体は、多額の資金と引き替えに兵器にされたらしい。金に目が眩んだのか知らないが、両親はまさかわたしが帰ってくるとは思わなかったのだろう。
ただ朽ちた街。わたしの故郷はもうない。
わたしが、壊した。
このまま街と一緒にわたしも壊れればよかったのに。
ふと人の気配がして、そちらを見るとひとりの女性が一緒に来ないかと言った。差し伸ばされた手を躊躇いながら取ると、彼女は柔らかく微笑んだ。その笑みにはどこか覚悟が見えた。
もしかしたら、わたしをわたしと思ってくれる人は世界中でこの人だけかもしれない。
この人を傷つけてはいけない。そんな気がした。
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1/13 まだ見ぬ景色の少女視点
1/19/2025, 1:44:28 PM