10.1年前 黒大
晩飯も食い終わり、居間でテレビを見ていると不意に背中に重みを感じる。
「くろお」
「どうした?」
「くろおーーー。づがれだぁ」
俺達が付き合い始めて5年、同棲を始めて1年。互いに相手に自分の弱い部分を見せたり、甘えたりするのは苦手な性分だが、少しづつ相手を頼ることができるようになってきていた。ただ1人溜め込みがちなことに変わりはないが。
「会社で何かあったんでしょうか?」
「ん"ん"ん"ん"ー」
それでも、1年前にはこうして澤村が自分から負の感情を外に出すことは少なかった。俺から声をかけてやっと話してくれる、そんな感じだった。だから互いに余裕がなかった時にかなり空気がギスギスしたこともあった気がする。
「それどっちだよ」
「うるさい」
そんないざこざも乗り越えて来た今、澤村の扱い方は俺が1番知っていると豪語しても良いだろう。そして俺の経験上こういう時は俺からは何もせず澤村の我儘に従順であるべきなのである。
「理不尽じゃないですかサームラサン」
「いいから、黙って抱き枕になってろよお前は」
そう言いながら澤村は俺を後ろに引っ張る。どうやら俺は澤村と添い寝をする権利を手に入れたらしい。
6/16/2024, 12:45:51 PM