ノイズ

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おばあちゃんが死んだ。おばあちゃんは正直嫌いだった。おばあちゃんはいつも不機嫌だった。テレビのニュースを見ては政治家に文句を言い、お母さんが宥める光景を何度見ただろう。私はおばあちゃんに怒られた記憶しかない。挨拶はちゃんとしろ、モゴモゴ喋るな、特に人に会うとガミガミ言われた。人前で怒られるのは恥ずかしくておばあちゃんと外に出るのが嫌だった。嫌いだった大嫌いだったはずなのになんでこんなに涙が止まらないのだろう。もう一生会えないことがこんなに苦しいことなんて思わなかった。平然と過ごした何気ないおばあちゃんとの日々はこんなに大切なものなのだと初めて気づいた。



そんなおばあちゃんにはある習慣があった。家にあるおじいちゃんの仏壇に毎日、念仏を唱えることだ。なぜ毎日同じように念仏を唱えるのか聞いたことがある。するとおばあちゃんはこう言った。

「おじいちゃんの体はもう死んだけどね、わたしやあんたたちが生きてる限りこの世にいるんだよ。おじいちゃんが今まで与えてくれたほんの小さい心の繋がりをね、感謝するためにわたしは祈ってるわけ」

私はふーん、とあまり興味を持たなかったが今ならわかる気がする。失ってから気づくなんて遅すぎるのかもしれないが。

12/13/2024, 2:24:30 AM