暗がりの中
今日の日の出は6時17分。
それよりも前に起床。
暗がりの中起き出して軽く顔を洗い、寝る前にセットしておいたウェアに着替える。肌寒い。
これは使って、と娘に口をすっぱくして言われている反射テープを腕と足とにぐるっと巻いた。事故防止用、今日もご安全に。
そっと玄関から出て、公園までゆっくりと歩いていく。町はまだ眠っている。
ベンチに荷物をいったん置いて軽く準備運動していく。スニーカーの紐を一度ほどいて結び直して、走りだした。
定年後、からのキャリア社員としての出向から数年。
喫緊の課題が浮上した。
無趣味だ。
老後の楽しみというが何も楽しみではない。やる事がない。
妻には、なら一緒に楽器やる?と誘われている。
誘われてはいるがマリンバというのが躊躇させる、何かいい並奏できる楽器など無かろうか。いっそ横でずっと聴いてる方が楽しい。練習中は気が散るからダメ、と笑って止められるが。
読書、囲碁、将棋、盆栽、詩歌、競馬、どれも性に合わない。一体全体どうして静的なものばかりなんだ。老人だって暴れたい。
同僚は畑を借りて野菜を作っているらしい、こぢんまりとしたものだけどと笑いながら貰ったお裾分けのきゅうりは店のものより5倍は大きくて、なんだこれはと思ったが美味しかった。畑はいいかもしれない。
ゲートボールは近所のサークルをすでに調査済みだ。まだ参加には早い。
そして思い切ってこのウェアとシューズを買ってみたのだった。
趣味:ランニング
これはいい。
ちらりと時計を見つつペースを緩やかに落としていく。坂道なので自然とゆっくりになるが。
息が軽く上がっていく。ちょっとした高台の終点に着いた。夜明け前だ。
だんだんとあたりが明るくなっていき、ぼんやりしていた何もかもに朝の影が落ちていく。自分がくっきりとしていく。
開けた高台から見下ろす街はまだ静かに朝霧に包まれていて、美しかった。
朝の澄んだ空気を一度大きく吸って、吐いた。
うまい。
10/28/2024, 11:40:57 PM