日陰の少女
ジョンは今日も1人で遊んでいた。
野原に寝転がって、草の匂いや花の匂いを嗅いで本を読んだり走り回ったり。
毎日がそうやって過ぎていった。
ある時、ジョンは走るのに夢中になって、今まで来たことのないところに来てしまった。
そこには、1本の大きな木があった。
近づくと、そこには1人の少女が、ちょこんと座って本を読んでいた。
少女はジョンに気がついて、ちらっと見たが、読書を続けた。
ジョンは少女に話しかけた。
「こんにちは」
少女は黙って本を読んでいる。
ジョンは帰ろうと思って背を向けたとき、少女が口を開いた。
「一緒に本、読まない…?」
ジョンはびっくりして少女を見た。
そして静かに近づいて隣に座った。
少女は驚いたようだったが、ジョンが持っていた本を開くと、2人で静かに本を読み始めた。
太陽が動いて、影が動く。
少女はずっと、日陰にいる。
ジョンは本が読みづらいからだと思っていた。
日が落ちて、ジョンが帰る時間になった。
すっと立って、少女に
「またね」
と声をかけ振り向くと、
そこに少女はいなかった。
「…ありがとう、楽しかったよ…」
そう聞こえた気がした。
大人になったジョンは、日陰を見ると時々このことを思い出しては、あの少女は何者だったのだろうかと考える。
あの日からずっと思っているのは
あの少女は、実際に存在してる人じゃないから、日陰にずっといたのだと。少女は霊で、日を恐れていたのでは、と
ジョンはそれでも、あの少女との思い出を大切に覚えている。
1/29/2025, 10:28:41 AM