ある夜。窓越しの暗闇に何かが蠢いたような気がした。
不思議に思って窓を開けてみると、するりと黒い毛玉が部屋に侵入してきた。
三角耳に揺れるしっぽ。黒猫だった。どうやら暗闇に紛れてこちらを伺っていたらしい。
黒猫は我が物顔で部屋を歩き回りふわふわのソファを見つけるとそこで大きく伸びをした。
野良猫の割には毛艶がいい。思わず手を伸ばし撫でてみると、黒猫は手に顔を擦り寄せた。人間慣れもしているらしい。もしかするとこれは。
SNSで【黒猫 迷 ××市】と検索をかけてみた。
案の定それらしき投稿が見つかり、投稿者にメッセージを送った。返事はすぐに返ってきて、何点かの確認ののち明日飼い主が黒猫を引き取りに来ることが決まった。
「お前、運が良かったなぁ。明日すぐにご主人さまと会えるぞ〜」
まるで返事のように、猫はにゃあと元気に鳴いた。
翌日、飼い主が黒猫を引き取りに来た。黒いワンピースを着た、黒猫によく似た美しく長い黒髪を持つ女性だった。
きっと彼女も、黒猫のように暗闇に紛れてしまえるんだろうと思った。
7/1/2024, 12:04:22 PM