「ココロオドル」
昔は世界が輝いていた、ように思う。
何はなくても学期末の休みが楽しみだった
誕生日やクリスマスを手放しで祝えた
祖父母の家まで数時間かけて行くことも厭わなかった
川に入るのが好きだった
スキーも毎年行っていた
自然を愛していた
いつからか、本心を隠すことが美徳となった。
ひとの嫌がることはやめなければならなかった。
そうでなければひとに認められないから、社会に属せないから。
そのうち、何にでも理由を求めるようになった。
休暇はやることがないから楽しくなくなった
歳を取ることに意味を見出さなくなった
クリスマスは一人だから祝わなくなった
ボケてゆく家族に付き合いきれず疎遠になった
偶に行くと歓迎されて駄賃を渡されるが、金の無心のようで罪悪感が芽生えた
川は遊泳禁止になった
年々雪は減り、値段も高騰したのでスキーも行かなくなった
身の回りにあった木々や川は、ビルと人混みに変わった
生活は無味になった。
金のために数日働いて、休暇という名の睡眠時間を過ごして、
いつか来るはずの迎えを待ちながら、ただただ時間を浪費している。
どうか音楽だけは、あの頃と同じように意味も理由もなく、
心を昂ぶらせてくれたら良いと思いながら、
一人、スピーカーを付けた。
10/9/2023, 11:33:17 AM