『意味がないこと』
「さて、ここには今、あなたとわたししかいませんが、どうします?」
それまで一言も発しなかった人に声をかけられて、ビクリと体が震えた。
恐る恐る顔を上げると、心底つまらなそうな表情が窺える。
「出来るかどうかわかりませんけど、頑張ってここを出るか、諦めてここでなんとか過ごすことを考えるか」
――それとも、すべて投げ出して何も考えず、無為に過ごすか。
すぐには返事ができず、ただ俯くばかりの私に一瞥をくれると、その人はぽつりと呟いた。
「まあ、こんなことを考えるだけ、無駄かもしれませんがね」
恐らく外に出ても私たち以外、誰も生存者はいないだろう。
むしろ、外に出ることで様々な危険を伴う。
かといって、ここにいても食糧がないので飢えることは想像に難くない。
どこから世界はおかしくなってしまったのだろう。
詮無いこととはいえ、考えずにいられない。
某大国の国家元首を決める選挙からか?
その前の北方の戦争か?
それより昔の……
すべてはもう、意味がないことだ。
誰も彼もいなくなった、今となっては。
11/9/2024, 6:53:58 AM