#1『鏡の中の自分』
私は鏡を見るのが好きだ。毎日鏡を見て、その中の自分を見て、今日のコンディションと筋肉を見て、酔いしれる。
私は自分自身が好きだ。だから、鏡の中の自分はたまに違う時がある。
「おい、上腕二頭筋……今日はどうしたんだ。なに? 調子が悪いだと? ふさげたことを言うな! 貴様など、私の真似に過ぎんのだ!」
私自身と鏡は違う。同じに見えている者は、それは自分自身を信じていない証拠。
そんな物捨ててしまえ。私こそが最高なのだから。
「どりゃああああっ!!」
だから自分自身を信じて鏡を殴り割った。
あぁ、この鏡は買ってからまだ三日だというのに。また買いに行かなくては。
行きつけのホームセンター。
店員は私を常連と知る。
「今回はこちらの鏡を用意致しました。破壊は購入後にお願いします」
「もちろんだ」
11/4/2023, 3:59:26 AM