『終点』2023.08.10
この電車を終点まで乗ったらどうなるだろう、という考えがよぎり思わず笑ってしまった。
今書いている脚本の登場人物のような思考。ミッドライフクライシスというらしい。
あいにく自分はまだそこに至る年齢ではない。本やネットで調べただけの知識しかないが、中年期におこる憂鬱のことを言うらしい。
今日はオフだ。人に会う用事も買い物もない。時間に余裕はある。
いっそ本当に終点まで行ってみようか。
路線図を確認すると、終点は高崎駅だ。
行けなくはない。帰れなくもない。
帰宅の時間や交通系電子マネーの残金を考えると、なかなかの大冒険である。
しかし。
などと悩んでいると、本来降りるべきだった駅をすぎてしまった。
不思議と焦りはなかった。だから、そのまま座席に座ったまま流れる景色を見る。
乗り過ごしたのなら、仕方ない。
バッグから手帳を取り出し、今の心境をメモしようとした。しかし、それすらも面倒くさくなり、すぐに片付けた。
今の自分はシナリオの登場人物だ。その心境をトレスすることにした。
電車はガタンゴトンと揺れながら、高崎駅を目指す。
8/10/2023, 11:50:03 AM