オレンジ色がぼんやり滲む。表面張力で何とか潤いを保っていた瞳は今にも限界を迎えそうで。
嗚呼、どうして夕方というのは人をこんなにもセンチメンタルにさせるのか。
ベランダで一人、柵にもたれかかっていた男は気だるそうに煙を吐いた。
何だか煙草が目に染みるなあ。ボタボタっと大粒の涙が落っこちるも構わずに空をゆっくり見上げ続ける。
失敗した大きな商談、突然別れを切り出してきた元カノ、自ら命を絶った親友、脳裏に浮かぶのはこんなことばかり。
人生というのはおしなべて何かを失ってゆくものなのだろうか。
分からない、何も。
それでも煙草の苦味が今はとても心地良い。
10/10/2024, 11:23:44 PM