イオリ

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大好きな君に

 朝方、布団から脱出し、少しだけ爪を立てて僕の顔をちょん、と突っつく。早くストーブをつけろとせかす。目をこすりながら起き上がり、スイッチを押して僕はトイレに行く。

 戻ってみると、温風はまだ吹いていない。まだかまだかと、立ったままストーブとにらめっこしているその背中。なんとも愛らしい曲線。

 ストーブで温まったあと、餌を食べてまた温風の前に戻る。二度寝の始まり。

 昼少し前にお目覚め。日の光を浴びながら伸びをする。その後突然走り出す。庭の柿の木に駆け登り、太い枝に鎮座する。そよ風ごときでは微動だにせず、遠くを見つめるその姿。なんと雄々しいこと。

 かと思えば、木から降りて僕の足元でゴロンと倒れ、腹を見せる。よしよし、なでてやろう。この甘えん坊め。

 部屋でPC作業していると、ドアを開けろと鳴く。手を止めて開けると、走ってデスクに飛び乗る。机上の様子を見回し、モニターに顔をこすりつけ、ひと通りのルーティンを済ます。異常なし、と確認しまた温風の前に戻って寝る。可愛い。とても。



 という話を年上の彼女にした。

 わたしの家、昔から犬派だから。冷徹な声だった。

 それは知っていた。でも、だからこそ君に知って欲しい。猫がどんなに可愛いか。どんなに素晴らしい家族か。

 猫飼ってみようって考えたことない?

 ない。犬飼ってるし。
  
 そう。飼わない?

 飼わない。あなた猫っぽいし。それで十分。


 これはどう受け止めるか。うれしいでいいのか。
 
 

 
 

3/4/2024, 10:04:37 PM