ぱちぱちと、火花が散っている。
爆ぜる木の葉の、その燃えた香りが懐かしくて。
あなたの持つ線香花火の行く先を見るふりをして、
指先を辿り、その奥のあなたの顔をそっと眺めている。
夜に溶けこむように花火の茜色が頰に反射して、
まるで恋しているようにあたたかく染めあげる。
あなたの隣に誰もいなければよかったのに。
そうしたら、わたしが隣にいたって、
あなたはわたしをただ優しいだけだと思ってくれたのに。
私の火種は、ただ火種のまま燻って、はたと落ちた。
あなたは、ぱちぱちと華を咲かせてゆく。
知らない誰かに笑いかけるように、
悲しいほど美しく、鮮やかに火の粉が舞う。
いっそのこと、あなたの花火で火傷させて欲しかった。
近づきすぎた自分に、戒めが欲しかった。
あなたの線香花火の火種が、ぽとりと落ちた。
もう終わったのに、その火種は
枯れ落ちた葉を柔らかく燻らせていく。
じわりと燃え広がって、ゆっくりと、冷めないままで。
溶けた蝋は戻らず、使い終わった花火は棄てるだけ。
はじけるような恋は、あなたの手の中にだけ。
燃やし尽くせなかった灰のような想いが、
私の中にただ、残っている。
「燃える葉」 白米おこめ
10/6/2025, 11:38:45 AM