ゆずし

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 想いを綴るのが日記。
 想いを送るのが手紙。

 想いを伝えるのが言葉。

「残念ながら……彼女はもう」

 死んだ。
 微かにあった息が完全に途絶えて。

 医師の言葉を半分無意識状態で聞き流した。もう、彼女の想いが伝わる事はない。話すという当たり前が行えない。

 交通事故に巻き込まれた。ぼくの手の中にあった指輪が皮肉も綺麗に輝いていた。今日、渡すつもりだったこれを。


「遺族の方から、これを預かっています」
「手紙、ですか……?」
「毎日書き留めていたそうです」

『想いを綴るのが日記。でも、自分だけで完結しちゃうのは勿体ないから───』

 手紙を握る手が強くなる。紙にくしゃりと皺が寄る。涙で文字が薄らと滲んだ。

『大好きな君に、手紙として想いを送りたいと思います』


 ○月○日「今日は君がついに告白してくれた。ありがとうっ、人生で一番幸せだよ」
 ○月△日「初デート、楽しみだぁ」
 □月○日「急に泊まりは卑怯だよ。本当に待って」

 ☆月□日「いつか……"君と結婚したい"」


「───それが、今日になる……はずだったんだ」

 君の願いは、想いは確かに伝わった。
 でもごめん、それは叶えられない。


 もう、君はこの世に居ないんだから。

3/5/2023, 3:55:38 AM