もしも、なんて都合の良いものは無い。
亡き父を責める悪夢を見て、私は自分に言い聞かせる。
過去に縋るのも、未来に縋るのも、……見苦しい。
分かってる、もう……父は、此の世界には、いない。
父を責めることで、自分の弱さから逃れようなんて、馬鹿らしい。
やはり、いつに成っても、親の器に私は甘えたいのだろうか。
親離れが出来ない、未だに幼い自分に腹が立つ。
大人に成るのを急いだ代償なら、なんと滑稽だろう。
自分の選んだ……過去に選択した積み重ね、其れが人生だ。
紛れもなく、今の自分は……生き様は……過去の選択の結果に過ぎない。
『他者のせい』にするのは、一時は良いが……もう、こりごりだ。
私は、自分の保身に走った。だから、今も生きている。
父のような愛情深さも、父のような勇気も、父のような覚悟も、
私には無かった。
相棒であり、親友であり、最も心許した家族で在り、
異母弟の彼のような芯の強さも、私には無かった。
父のように成りたくて、異母弟のように成りたくて、
でも、かつての私は成ろうと、努めようともしなかった。
父も異母弟も疾うの昔に、この世を去った。
今、私は決する。
もしもなどという……幻のもうひとつの物語を、もう抱かないと。
10/29/2023, 10:47:49 AM