わをん

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『こんな夢を見た』

ぼうとした頭で見た夢を思い出そうとするが手のひらに乗せた雪のように形を無くしてしまいもう誰にも掴めない。世の中には夢が形になって残っているものもあるようだ。文豪というやつは酔狂なことをする。
百年後に咲いた白百合
禅寺に鳴り響く時計の音
百年後に裁かれた人の親
帰ってこない酔いどれた老人
岩に残った蹄の痕を撫でる手
散らばった木屑
穏やかな黒い海
桶に入った様々な形の金魚
寒々しい鳥居と石段
人の手に渡ったパナマ帽
残らないと思われた夢の欠片は文字を与えられてしまったばかりに留まり続けている。自分には琥珀に取り残された虫のように思えてしまい、それは少し不憫に思える。

1/24/2024, 3:23:16 AM