Kagari

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上手くいかなくたっていい

「……明日の式、自信ない」

 なんて後輩が俯きがちにぽつりと呟いた。
 そんな悩める後輩へなんの言葉を送るべきか、一瞬迷った私は双子の弟と顔を見合わせた。言葉を選ぶっていうよりは、どっちがどっちの言葉を言おうかっていうちょっとした打ち合わせ? アイコンタクトみたいなもの。

「「別に上手くいかなくてもいいじゃん」」

 ああ、やっぱり。私も弟も、最初に言いたい言葉はそれだった。なんだかんだで思考回路が似通ってるのかもしれない。嬉しいかどうかはさておいて。

「そりゃあいいとこ見せたいだろうけどさ」
「別に死ぬわけじゃねえんだし」
「心のどっかでビビりながらやるほうが失敗するよ」
「そうそう。失敗するかも、思いどおりにいかないもんだって思ってると本当にそのとおりになるんだ、ってどっかの偉い誰かが言ってたぞ」

 私と弟、口々に思いついた言葉を声に上げる。だって、私たちは知ってるもん。後輩が明日に向けてどれだけ頑張ってきたのか、見ていた。
 だから、この言葉だけは絶対に伝えたい。

「「大丈夫だよ」」

 私たちも信じてるから、自分のことを信じてあげてほしい。
 でも、心の片隅でもいいからこれは思っててほしい。


『たとえ上手くいかなくたって、明日は明日の風が吹く』


(いつもの3人シリーズ)

8/9/2024, 11:35:47 AM