MOR

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 年の最後のお別れに、「良いお年を」という。

 でも僕には、そんな言葉はかからない。
 友達もいないし、年中家で過ごしているからだ。青春する暇なんて、なかった。


「…良いお年を」
 何だか悔しくなって、声を出してみた。
 久々に出したので、この声はかすれていた。音量に関しては、久々に出したのでわからない。
 でも多分、小さかっただろうな。


「……良いお年を」
 妄想する。

 もし僕に友人がいて、恋人がいて、親友がいて、家族がいて、仲間がいたら。
 今日、こんな声をかけていただろうか。
 今日、こんな声をかけられていただろうか。

 涙が溢れる。
 訳もわからず。


 来年もきっと悪い年になる。
 じゃあ、こんなお祈り意味ないじゃないか。

 

「ぁ、ぁあああ。ぁぁあぁぁあああぁ!!!」

 叫ぶ。

 あの時、もしもあの時。



__きっと来年は、良い年に__






 絶対にないことなんて知っていても、願ってしまうのだから仕方がない。

12/31/2023, 11:18:56 AM