初めて乗った船は、内海を周る帆船だった。
ギィギィと絶え間なく鳴る船内は大変に居心地が悪く、また、船出間近に飛び乗ったこともあり腰を落ち着けられる余地などなく。
外の景色でも眺めていれば気も紛れるだろうと、背負った荷物を下ろすことなく甲板に出た。
燦燦と降り注ぐ陽光と嗅ぎ慣れない磯臭さ、ゆらゆらと揺れる足元。
ものの見事に酔ってしまった。
胃の中がグルグルと渦巻いているような不快な感覚、口の中に溜まった唾液を甲板の手摺に冷えて痺れが出始めた指先を掛けながら海へ吐き捨てる。
燦めく海の青も水鳥の賑やかな鳴き声も、その時は目に写るだけでも不愉快だった。
年若い船方が「ラクになる」と持ってきてくれた水飴を溶かした水を受け取り、一息に飲み干し。
テーマ「時間よ止まれ」
9/20/2024, 8:43:40 AM