Mana

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『夜景』


※大人な関係の話


伊川陽葵 Ikawa Himari
瀧島祐緋 Takishima Yuhi

sub_ 菜島梨花 Najima Lika
烏合海里 Ugo Kairi



どれだけいろんな人と繋がりを持とうが

どれだけ親密な関係になろうが

一切満たされたことはない。



それはたぶん、私が誰のことも信用してないから__





「もう帰る?」


「うん、さようなら」



ワンナイトだけの関係。

後から情が湧くのをさけるため。



ネットで適当に繋がった大学生の男と。

身体を重ねてさようなら。



これくらいの関係が私には丁度いい。




「伊川?」


帰り道。


駅に向かって歩いていれば、誰かに呼び止められた。



……最悪だ。



そういう系のホテルばかりの並ぶこの道にいれば、何をしていたのか、何をするのかなんてわかる。


つまりは、ついに知り合いにばれたということ。


振り向けば、大学でよく見かける男。



「……瀧島、」


その隣には地雷という言葉のピッタリなロリータファッションの女が腕を絡めていた。


「お前ってこういうことしてんのな」


「お互い様。それに、学生なんてそんなもんでしょ?」


「確かにな」


「じゃあ、楽しい時間を」



さっさとここから離れよう。


いかにも隣の女、面倒くさそうだし。



そう思って足早に場を離れたのに、、



「おいお前歩くの早くね?」


なんて言って肩を掴む、ついさっき会った奴。


隣にあの女はいなかった。



「あの子は?」


「ん?置いてきた。お前と話したいから」


「は?」


とりあえずどっか入ろーぜ、なんて言って手を引く瀧島、、。


なんなのこいつ。




「で、何飲む?」


「一番度数少ないやつ」


「つれねーな」


「そんなことより、わざわざバーになんか連れてきてなに?」


「んー?さっきも言ったけどお話したかっただけだよ?」


「話すネタないんだけど」


「俺はある」



そう言って、急に目を合わせてきた。



大学の中でも有名なイケメン。


しかも、将来有望な瀧島グループの跡取り息子。


同じ教室にいれば、ほとんどの人の視線はこいつに向く。


ただ、全員に同じような愛想しか振りまかない姿が私には色濃く残っていた。



「で?その話っていうのは?」


「まあ単刀直入に言うと、セ○レにならね?って提案」


「却下。私、特定の人と関係持つつもりないから」


「俺ならよくね?俺はただ純粋に行為を楽しんでるだけだし、お前が求める時いつでも俺呼び出していいよ?」



「わざわざ相手探す手間省けるし」って私が一番面倒に思っていたことを突いてくる。



「それでもダメ。まずあんたなのが問題。関係がばれた時が最悪」



人気者と関わりがあるって知られるだけで面倒事になるのは目に見えてる。


最悪の場合殺されそうだし。



「バレない対策として、俺ん所系列のホテルでできるっていうのは?」


「は?ラブホあんの?」


「ちげーわ。そっち目的のじゃなくて、普通のホテル」



瀧島グループが経営するホテルのこと言ってるんだろうけど、余計に意味わからない。


まず、瀧島グループのホテルは超高級ホテルで、芸能人や著名人も利用する。


一般人が泊まれる、、ましてや、そんなことをするためだけに泊まれるわけない。



「まあ、俺が任されたとこだけだけどな、使えるの」


「え?」


「俺、3つのホテルの責任者やってんの。だから、その3つだったら融通きくよ」


「……職権乱用」


「まあいいじゃん?俺ん所のホテルなら、セキュリティはばっちりだし、時間も基本は好きにできる、俺らの関係は誰にもバレない。これ以上の優良物件ある?それに今なら高級ホテルが無料で泊まれるよ?ホテルはうちの自慢でもあるし」


「………のった」





背に腹はかえられない。


手っ取り早い手段、掴むべきチャンスは掴まなきゃ。




「じゃあ、よろしくね?陽葵」


「わざわざ呼び方変える必要ある?」


「いーじゃん?秘密の関係ってかんじ」


「……大学では絶対話しかけないでね」


「もちろん。互いにバレたくない同士」



よろしく。





秘密の関係。契約。



泥沼のような関係は、こうして始まった。




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「何考えてんの?」


「……んー特に何も」


「ふーん」



情事を終えた後の、普通の恋人なら甘い時間を過ごすであろう今。


私たちにそんな甘さは無い。



事後、いつも瀧島が持ってきてくれるお酒をのんで微睡みながら眠りにつく。






「今日のはなに?」


「ウォッカギブソン」


「普通のウォッカじゃないの?」


「カクテル。最近ハマったから作ってみた」


「ふーん、、。っ、強くない?」


「そう?まあこの後寝るだけだしよくね?」




大きな窓から見下ろせる素晴らしい夜景を眺めながら、ウォッカギブソンを飲む瀧島。


いい意味で大学生になんか見えない彼は、大人の色気を振りまく。



この部屋で毎度見るその姿が、日に日に憂いを帯びていくようで、。


夜景に溶けていきそうな儚い姿が目に焼き付く。



やっぱりこの関係は良くなかったのかもしれない。



だって、、私の気持ちが、動きはじめているから。









「祐緋、」


「っ、?」


「……」


「、、寝言かよ」






夜が明ける。


夜景は太陽によって消えていく。




まるでこの関係に亀裂を入れるように。




徐々に徐々に、、、







?「……あの女、絶対許さない」





?「、、、元気にしてるかな、陽葵は」







ウォッカギブソン____隠せない気持ち






to be continued...?








9/18/2023, 3:09:56 PM