はた織

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 どこへ行けば良いのか分からない私の身体が煩わしいので、いっそのことジャムになって瓶に詰めてしまいたい。
 解体して、更に分解して、もっと崩壊した肉片と内臓と骨を鍋の中に入れて、コトコト煮込むのさ。
 無駄に硬い骨も一年以上煮込めば、光沢帯びる真珠の煌めきになるだろうよ。肉と内臓が全部溶け込んで数十年、砂糖と他人に甘やかされて育った身体だ。これ以上の甘さはいらない。もう十分甘すぎる。熟れすぎた苺よりも赤黒い。
 ドロドロに溶けた私の身体をガラス瓶に詰め込んで、仕上げに髪の毛のラッピングをするのさ。ずっと触りたくなる黒いリボンだ。もう赤いジャムなんかよりも、リボンを触り続ければいい。
 ジャムは、ガラス瓶の中でしかその美味しそうな輝きを保てない。パンに塗れば単なる情報となる。情報しか食べられない現代人になんか食べて欲しくない。ずっと飾ってほしい。
 テーブルの片隅に、いつから置いてあったのだろうと不安になりながらも、100年後の賞味期限を確認して安心すればいい。どうせ100年経つ前に忘れられる。
 そう言えば、あのジャム瓶はどこに行ったと思った時には、テーブルの下に落ちて右往左往している。
 結局、私の身体はジャムになっても、どこへ行けばいいのか分からない。
               (250423 どこへ行こう)

4/23/2025, 1:17:31 PM