《手を取り合って》
「信じています。」
全ては、この一言から始まっていた。
旅の最中にキーアイテムが盗まれたのではと騒ぎになった時、僕は自分が疑われるのではないかと酷く怯えた。
幼い頃から何かあれば「お前のせいだ」と詰られてきた経験が重く伸し掛かったから。
仲間の一人は、僕を信用していないと言ってきた。
無理もない。術で操られていたとは言え、前科があるからだ。
だから僕は、その仲間の心に住んでいる彼女に藁にも縋る思いで聞いてみた。
「やはり僕のことを信じられませんか?」
こんな僕を、彼女は信じてくれていた。
何ひとつとして根拠などなかったろうに、一息の間も置かず答えてくれた。
本当に嬉しかった。
この一言を支えに、今まで歩いてきたくらいだ。
そして彼女は、こちらに顕現してなお、僕を信じ抜いてくれていた。
僕自身は、彼女を闇の者と疑ってしまったのに。
疑われる苦しさをよく知っているはずの僕が真っ先に彼女を疑ってしまった。それは後悔してもし切れない。
彼女はしかし、疑われても僕を信じることを諦めないでいてくれた。
僕が苦しさで立ち止まった時は、必ずその手を差し伸べてくれていた。
僕は、そんな彼女と共にありたい。
長い人生を共に歩んでいきたい。
彼女が暗闇で躓いた時、傍らで支え続けたい。
彼女に何か遭ったなら、何はなくとも駆け付けたい。
僕に不慮の事故が遭った際、真っ先に知らせが行く人であってほしい。
貴女が僕を信じてくれたように、僕は貴女を信じ抜くと誓います。
そんな願いと誓いを込めて彼女の小さな手を握れば、俯き耳まで真っ赤になりながらそっと手を握り返してくれた。
7/14/2024, 11:02:26 PM