目の前には、地獄絵図が広がっていた。
私達の家は燃え、両親は化け物に殺された。
そして私は、瓦礫に挟まれ動けない。
「お姉ちゃん!!」
妹の雪が、私に助けを求める。
妹は、漆黒の化け物に担がれ、攫われようとしている。
足をバタバタと動かし、抵抗するも、がたいの良い化け物にはびくともしない。
なんとか助けようと、体を動かす。
瓦礫が体に食い込み、気を失いそうな痛みが、痛覚を刺激する。
正直、意識を保ててるのは火事場の馬鹿力のおかげだろう。
だが、立ち上がれない。助けられない
助けを求める雪の顔が、目に焼き付く。
助けたい 助けたい 助けたい!
あの時、暗闇の世界で助けてくれた彼のように、
今度は私が雪を助けるんだ!!
もう使い切った火事場の馬鹿力を、もう一回発動させようとする。
無理に起きあがろうとして、体中から血が流れる。
きっと側から見たら、そうとうグロいだろう。
(もう一回、もう一回だけで良い。だから
あの時の奇跡をもう一度!!)
強く願ったその瞬間
私は暗闇の中にいた
この世界の闇、裏側。全てを知り、背負う覚悟は決めたか?
体に響き、低く、重い言葉が聞こえてくる。
(それで、雪を救えるのなら。)
そう、答えた瞬間。
暗闇から抜け出し、元の世界に戻った。
相変わらず、辺りは燃えており、目の前で連れ去られそうになっている雪の姿が見える。
今なら助けられる
謎の自信があった
病弱で、まともに外へ出かけられない私が。
ぐっと体を起こすと、さっきまで起きれなかったのが嘘のように、立ち上がれる。
瓦礫の重さが、発泡スチロールのように軽かった。
雪は驚いているようだ
化け物も流石の異常さに、こちらを振り向く。
その間に、私は虚空から薙刀を取り出していた。
一体どうやったのか、分からない。
ただ、手を握るように、自然と出来てしまった。
薙刀は、夜空の色で浸けたような、漆黒の色だった。
その薙刀で、化け物を攻撃しようと、踏み込む。
こうすれば死ぬ 何故か直感で分かった
私は、薙刀を素早い速度で横に振り、攻撃する。
化け物は反応する間も無く、横に真っ二つになり、霧のようになり、消えた。
担がれていた雪が、地面に落ちる。
「雪!」
私は、雪の元に駆け寄ろうとするが、足がもつれて転んでしまう。
手から薙刀が離れ、薙刀は虚空の中に消えてしまった。
「お、お姉ちゃん!」
体勢を整えながら、雪が駆け寄ってくる。
視界がだんだんとぼやけてくる。
雪の声が微かに聞こえてくる
まぶたが岩のように重い
そのまま、私は意識を無くした。
お題『奇跡をもう一度』
10/2/2023, 11:21:55 AM