君はなかなか写真を撮らせてくれない。今この瞬間の光の加減、空模様、絶対絵になると思っても、写真を撮りたいからそこに立って、などと言えば怪訝な顔をして歩き去る。
だから撮りたければ、何も告げずにいきなりシャッターを切る。大抵はぶれてしまったり、被写体が近過ぎたり遠過ぎたりで上手くいかないけれど。
でもお気に入りの一枚もある。これは確か、君の誕生日が近かった日。任務明けに機体から降りてきた時、春霞で淡い青色に染まった、夜明けの空を振り返る瞬間。逆光になってしまって表情はよく見えないけれど、薄雲の向こうからそそぐ柔らかい光に君は包まれている。
夜の間ずっと張り詰めていた空気が嘘のように、君が降り立った朝のなんと穏やかなことだろう。
#やわらかな光
10/16/2023, 1:22:04 PM