「君が見た景色」
君が見た景色、それは私の知らぬものだった。私は、そのことにふと気づいて、思わず柔らかな日差しの窓辺に腰を下ろした。小太郎——私の愛犬が、こちらへと小さな足音を立ててやってきた。彼の眼差しには、何もかもが初めての驚きと、無邪気な好奇心が浮かんでいる。その瞳に映る世界はきっと、私のものとは違う色と形に満ちているのだろう。
私は手を伸ばし、小太郎の頭を優しく撫でた。彼はしきりに尻尾を振り、私に寄り添った。草の匂い、遠く鳴く雀の声、ガラス越しの光のまぶしさ——小太郎はそれらすべてを、新鮮な驚きで受け止めているらしい。
「コタ、おまえにはどんな景色が見えているのだろうね」私はそう小さく呟いた。答えぬ小太郎だが、その素直な表情に、私はふと心打たれるものを感じた。世の中のすべては、見る者の心により、一つ一つ違うものになるのだと、私は改めて思うのだった。
8/14/2025, 11:38:43 PM