《幼馴染》
軽快なリズムの音楽の音が聞こえる。
僕はなんとなく踊る気にはなれなかった。
だって_______
初恋の人がこの国の王子と一緒に踊っていたからだ。
僕は、数合わせか知らないけど、微塵も興味のない舞踏会に、強制的に行かされた。
最悪だ。なんのためにこんな面倒なことをしなくてはならないんだ?
時間と金と労力の無駄!!!
はあ、もう帰ろう。バレなければいいのだ。
帰ろう。
そう思って振り向いた瞬間、僕は帰るのをやめた。
そこには僕の幼馴染で初恋の姫___________エラがいたからだ。
長い金色の髪をふんわりと束ねて、耳にはダイヤの耳飾り。白い肌に薄く化粧をして、唇には紅がさされている。透き通るような水色のドレスにはラメがついていて動くたびに眩しい光を放つ。何よりも見惚れたのが_____ガラスの靴_____その靴はエラの足にピッタリで、神々しい光を宿していた。ドレスのスカートがふわりと浮き上がる時に微かに見えるガラスの靴はなんともロマンチックで美しい。
美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美しい美(省略)
そうだ!ダンスに誘えば…もしかしたら…なんか進展が…
「ねぇ、エラ、あの…」
「そこのお嬢さん、僕と踊ってくれませんか?」
はぁ!?お前なんだよ、僕の方が先だっただろ!?横取りはずるいぞ!!!
エラを横取りされたことに対する怒りで僕は何も考えずにその男に言った。
「ごめんなさい、僕の方がさ…き、に……なんでもありません、人違いでした。申し訳ありません、"王子殿下"」
まさか横取りした奴が王子だとは思わないじゃないか。だろ?
そして僕はもうここにいる理由もないし、帰ろうと思ったが、エラの姿を目に焼き付けておきたい、と思い帰るのはやめにした。
そして、今に至る。
ヤケクソになって今はその辺にあった菓子を平らげることに取り組んでいる。今はもう四皿目だ。
はっ、すごいだろう?(ドヤ)
ぜってー王子はこんなことできないだろ?はっはーん!
「ん?」
調子に乗ってエラと王子の方を向いたらあまりの光景に喉を詰まらせそうになった。
(それでぼくが死んでたらあいつら殺人だぜ)
僕が目にして死にかけた光景は…
エラが赤面して王子と密着しているところだ。
(浮気者め!エラ、あとで覚えてろよ)
僕はある計画を実行することにした。
いつか忘れたが、自分の妻が浮気した場合に実行する計画を作っておいたのだ。
え?
エラはまだお前の妻じゃないと?
わかっているよ、そんなこと。だが、こんな過去があったら妻同然なんだよ。
春のこと。
エラは僕を野原に連れてきた。
そこでエラはこう言った。
「わたし、あなたのことすき!けっこんしましょ!」
エェェェェェェェラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ忘れたとは言わせんぞ…!‼︎
あいつは、はっっっっきりと「結婚しましょう」と言っている。
しかもこれが僕の初恋のきっかけだ。
浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮気者浮(省略)
で、その計画というのが…
お祝いとして菓子を渡すがそこに毒…ではなく、睡眠薬を入れて少々説教をする。
はあああああああ、なんと優しいんだ、僕は。
家に帰ってまずは、母の部屋に行き、こっそり睡眠薬を取り出す。母は不眠症なので、部屋に常備している。
そして親戚からもらった菓子に睡眠薬をまぶす。
綺麗に包装紙に包んで…
よし!準備OK!
「なんでだよ!なんでこうなったんだ!!!!」
僕の震える手にあるのはエラの遺体。
睡眠薬と間違えて猛毒を入れてしまったようだ。
エラの綺麗なドレスには血がべっとりとついている。
苦しかったろう
ごめんなさい。許してくれないよな。だってこんなことしたから…
嗚呼、思い浮かぶ。
エラの笑顔が。
このお菓子に、猛毒があるとは知らず、受け取った時の嬉しそうな笑顔が。
小さい頃に結婚の約束をした時の笑顔が。
僕はあまりにも大きな喪失感に襲われてそこを動けなかった。
お題 喪失感
9/11/2024, 6:26:53 AM