すず

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 星間新聞の宇宙面、4cm四方の小さなスペースに『地球ついに消滅』という記事があった。宇宙標準時5月7日天の川銀河に属する人類の故郷、地球がついに太陽に飲み込まれるらしい。
 総身に炎を纏わせ、燃える恒星に突っ込むとはどういう感じがするものなのだろう。案外、長く焦がれた太陽とようやく一つになれると喜んでいるのかもしれない。
 そんなことを考えもしたが、なにせこちらは苦学生、空想などに身をやつしている暇はなかった。地球なんて御伽話のような星の事はさっさと忘れ、せこせこと文献を漁りいつ終わるともしれない課題をバッサバッサと片付けていった。
 a.m.03:00 なんとか課題を終え、シャワーを浴びようとふらふら星間船の通路を歩いていると、ひっそりと機内放送が入った。
 『皆さま今晩は、こちら機長です。本艦左舷をご覧ください。黄色く光る星が人類の母、太陽でございます。太陽では我々の祖先星である地球が今まさに飲み込まれようとしています』
 左を見れば、窓いっぱいに星が広がっていた。しかし黄色い星なんて沢山あって、どれが太陽かなんてことは到底検討がつかなかった。それでも、私の預かり知らぬところで小っぽけな青が、ぽしゃんと黄色に飲み込まれたらしかった。

お題『明日世界が終わるなら』

5/6/2024, 2:46:59 PM