夏畑

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『だれかに届きますように』
「とんでもない曲ができた...!」と僕は、直感した。それくらい光るものをこの曲に感じたのだ、、、。
しかし、僕は、同時に不安を感じてしまう。その不安とは、思ったような結果が出ないということだ。自分にとっては、傑作だと思っても、他人からすれば、この曲は、ただの何番煎じのポップスだと思われるかもしれない。だからこそ、僕は、あまり自分の直感を信じたくなかった。しかし、そんな自分でさえも驚くような曲ができたのだ。
 曲作りを始めて、何年経っただろうか?音楽だけで生活したいという願いは、いまだ叶っていない、、、
音符を紡ぐ・希望を言葉に乗せる、それらを一つの形に合わせていく。この行為を何十回、何百回繰り返しただろうか?僕が傑作だと思った曲『My Heart』は、結局、ヒットしなかった...。しかし、僕の方に一つのメッセージが届いた。「あなたの作る曲に救われました。これからも音楽活動頑張ってください」と。その言葉を聞いたとき、目頭が熱くなった。
 一人のために作る音楽でいいではないかと。たった一人でも聴いてくれる人がいればそれだけで音楽は、明日も生きることができるのではないかと。多くの人に聴かれなくてもいい、誰かがこの曲に救われたらそれだけで充分だと気づいた。それは、鬱陶しいと感じるほどの蝉時雨が少し静かになり、寂しさが込み上げる夏の終わりのことだった。

3/27/2024, 5:43:37 PM