優しい陽の明かりと頬杖

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鏡の中の自分

喜ぶとき 悲しむとき
世界が違って見える
日差しの暖かい 土曜の午後も
あなたがやさしく見える。

どんな時も 一緒だった。
あなたが三月の 桜を紡ぎ
子供用の 着物を着る ときでも
夏の風を受けて
小麦色の肌を 心配するときも
クリスマスイブも一緒だった。
あなたが買った洋服に
覚えたての メイクをしながら
跳び跳ねた 髪をおさえて
飛び出した冬の季節も

鏡よ 鏡
鏡の中の自分に問いかける
それはきっと 子供の頃
描いたもの全てが

鏡よ 鏡
鏡の中の自分に問いかける
大人へと 変わるときも
あなたのそば居ました。

あなたが
学生最期の卒業の朝も
忙しそうに走りながら
式へ向かうときでも
パパとママが心配そうにずっと
お嬢様ドレスのあなたの
後ろ姿を 見送りました。

あなたが会社で
OLになって
リクルートスーツを
着るようになって
何年目かの誕生日
車に乗った彼氏が
あなたを迎えに来ました。
相手はすこし 律儀で
格好いいハンサムの 彼氏で
スポーツがすこし 得意な
銀行のかたでした。

そして月日は
ウェディング。
六月の大安の日に
あなたは私を 去って
大人へと 上っていきます。
そして両親に挨拶を
花束を抱えて何度も
パパとママは泣いていました。

晴れの日の 風はすこし
あなたのような優しい
日の当たる 午後のような
穏やかな 日々を期待させる
天気のいい昼でした。

あなたのパパと
あなたのママが
そしてあなたがそこでブーケをつけて
私と一緒に もらっていかれました。

鏡よ 鏡
わたしはずっと 今日まで
あなたと一緒だった
鏡の中の自分が 今日は綺麗ですか?

11/3/2023, 8:25:34 PM