せつか

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冬は一緒に星を見よう。
春は二人で花見をしよう。
夏は海辺を散歩して、

秋には私はひとりきり。

散った紅葉を踏みながら、貴方が眠る場所へと向かう。持っていくのは結局最後までやめられなかった煙草と、毎日のように食べていた好物のチョコレート。花はどうせ分かんないだろうから供えてなんかやらない。

「これだけ赤く染まってるんだから、充分だよね?」
私を置いて逝った貴方に、花なんか供えてやらない。
「ねえ」
火をつけた煙草を一瞬だけ墓石に置いて、すぐに取り上げる。
「どうせ紅葉を見に行くなら、墓場なんかじゃなくてもっと別のところに一緒に行きたかったよ」
一口吸って、嫌味のように吹きかけてやる。
「ざまあみろ」

そう吐き捨てたあと思いっきり噎せたから、慣れない煙草のせいだと言い聞かせた。

そう、滲んだ涙も煙草のせい。


END

「冬は一緒に」

12/18/2023, 12:08:16 PM